気象予報士の河津真人(@makotokawazu)です。

割と読書が好きで、通勤時間中は何かしら読んでいます。小説はあまり読まないのですが、一番好きな小説家は誰かと聞かれたら村上春樹と答えます。

本を読み始めるようになったのは遅めで大学4年ごろからなんですが、最初に小説でも読んでみるか~と思って手に取ったのがノルウェイの森でした。

ノルウェイの森を読んで衝撃を受けて以来、そのインパクトを越えることはなく今に至ります。

近頃は毎年秋になると「村上春樹、ノーベル賞なるか!?」みたいに騒がれたり、新刊が出るたびに過度に話題になったりするので、ファンであることをおおっぴらにはしにくくなってしまいました。

それでも定期的に読み返しているのですが、先日改めて「みみずくは黄昏に飛びたつ」を読んだらとてもためになることが書いてあったので、ブログに書き残しておこうと思います。



作家同士の深いインタビュー本


「みみずくは黄昏に飛びたつ」は作家・川上未映子さんによる村上春樹のインタビュー本です。

川上さんは私なんかよりもはるかに深い村上春樹のファンで、作家でもありますから、村上春樹の今まで見えていなかった部分まで引き出してくれたのではないでしょうか。

インタビューは4日間の4回にわたって行われ、最初の1回目は2015年に、その後の2~4回目は最新長編作品の「騎士団長殺し」が書き上げられた後になる2016~17年の冬に行われました。

村上春樹の基本方針はたった二つ


インタビューの中で、ふいに村上春樹から文章を書く時の基本方針が語られます。その方針は基本的には二つしかないのだとか。

乞食だか巡礼だかが話してるんだけど、「おまえ、俺の話、ちゃんと聞いてんのか」って一人が言うと、もう一人が「俺はつんぼじゃねえや」と答える。
<中略>
「聞こえてら」で済む会話ですよね。でもそれじゃドラマにならないわけ。「つんぼじゃねえや」と返すから、そのやりとりに動きが生まれる。

読者が簡単に読み飛ばせるような文章を書いていてはいけないと村上春樹は語ります。

「私にとって眠れない夜は、太った郵便配達員と同じくらい珍しい」というと、「へぇ!」って思うじゃないですか。
<中略>
それが生きた文章なんです。そこに反応が生まれる。動きが生まれる。

レイモンド・チャンドラーの比喩を取り上げて、その重要さを説きます。小説の発想や仕掛けの面白さは、まず文章が生きていないといけないのだそうです。

天気予報を伝えることをはじめて10年弱になりますが、発想や仕掛けについて考えたことはあっても、動きのある生きた文章や解説をしたことはありませんでした。

もちろん作家と気象予報士を比べて語ることはできないのですが、それでも何かを伝える者として、村上春樹の語る基本方針は胸に刺さるものがありました。

牡蠣フライについて書くことが文章の訓練になる


この本を読んでいて、村上春樹は本当に文章を書くことが好きなのだなと思ったところがあります。

音楽について文章で書くのはむずかしいが、だからこそ文章を書く訓練になると村上春樹はいいます。さらにそこから牡蠣フライについての話が出てくるので引用します。

「牡蠣フライだろ、自分で揚げてみればわかるよ」というふうには言わない。それをできるだけ文章でありありと書きこむ。
<中略>
とにかく僕はその文章を読んだらもう、牡蠣フライ食べたくてしょうがなくなってくるとか、あるいはその文章を読んだらもう、ビール飲みたくてしょうがなくなってくるとか、そういう物理的な反応があるのがとにかく好きなんです。そしてそういう技術にさらに磨きをかけたいという強い欲があります。

あれだけ小説を書いてきて、まだ書く技術に磨きをかけたいのかよ!と思わずうなりました。

聴覚とか味覚に関わるものを文章で伝えるのってむずかしいと思うんですが、だからこそそれを想像できるようにしっかり書く必要があるんですね。

天気予報も、ただ晴れ、雨と解説するんではなくて、ちゃんと天気がイメージできるように伝えていかなければならないんだって思わされるポイントでした。

 

ということで、自分なりに考えさせられたところを抜き出してみましたが、これはインタビュー内容のごく一部です。もっともっと内容は濃いです。

正直、ある程度村上春樹の小説(特に騎士団長殺し)を読んでいないとついていけない部分もあるのですが、ある程度読んだことがある方ならこのインタビューも非常に楽しく読めると思います。

こんな感じで、また読書したらブログ書いていこうと思うのでよろしくお願いします~!